京都地方裁判所 昭和48年(ワ)1385号 判決 1974年11月13日
主文
一、被告は、原告に対し金六八〇万四、〇〇〇円およびこれに対する昭和四五年一一月一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二、訴訟費用は、被告の負担とする。
三、この判決は仮に執行することができる。
事実
第一、当事者の求めた裁判
一、請求の趣旨
主文同旨
二、請求の趣旨に対する答弁
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第二、当事者の主張
一、請求原因
1、被告は、原告に対し次のとおり原告発行の電話番号簿に広告を掲載したいとの申込みをした。
(一)、申込年月日 昭和四四年七月二日
(二)、電話番号簿広告料金 金六八〇万四、〇〇〇円
(三)、広告掲載番号簿 昭和四四年度京都市版職業別電話番号簿
(四)、広告掲載位置 第四表紙(裏表紙の表)
(五)、広告内容 ナイトクラブの広告
(六)、代金支払期日 昭和四四年一一月より昭和四五年一〇月まで毎月金五六万七、〇〇〇円を毎月末日限り均等分割払
2、原告は、被告に対し昭和四四年七月二日付で右申込みを承諾した。
3、原告は、被告に対し右申込みの広告を、昭和四四年一一月一日付で発行した昭和四四年度京都市版職業別電話番号簿に掲載した。
4、よつて被告は、原告に対して右広告料金六八〇万四、〇〇〇円およびこれに対する前記最終分割支払期日の翌日である昭和四五年一一月一日から支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
二、請求原因に対する認否
請求原因第一ないし第三項の事実はすべて認める。
三、抗弁
1、被告は、昭和三八年度から同四四年度まで、原告発行の職業別電話番号簿第四表紙に被告ナイトクラブの広告を掲載してきたが、右広告掲載は公開入札の方法によつて毎年行われてきたものであるところ、落札が確定した掲載権を他に譲渡したりすることを禁ずる趣意から入札者と同一資本の事業の場合を除き、連合広告は一切認めない約束となつていた。
ところで、昭和四四年度版の五十音別番号簿の第四表紙の広告掲載は訴外レストラン「白鳳」が落札したのであるが、実際には右「白鳳」と訴外「京都グランドホテル」の連合広告が掲載された。この事実は、原告が連合広告を掲載しないと、被告ら入札者にした約束の不履行にあたるので、被告は本件広告掲載料の支払いを拒むことができる。
2、前記広告の昭和四二年度版の入札の際、五十音別番号簿の第四表紙には広告掲載をしないということであつたので、被告は職業別番号簿第四表紙の広告を高い値で落札したところ、原告は右約束を破り、五十音別番号簿の第四表紙に訴外「白鳳」の広告を入札によらずして掲載したことがある。この時原告は被告に対し、将来広告掲載につき、これに類似した不公正なトラブルが発生した場合は一切、掲載料の請求はしない旨確約した。前記のとおり本件昭和四四年度の広告においては「白鳳」と「京都グランドホテル」の連合広告が約定に反し掲載されたのであるから、右確約により、原告は被告に対し本件広告料を請求しえない。
3、原告が電話番号簿に掲載した広告は原告が財団法人電気通信共済会近畿支部を販売代理店として販売した商品であり、原告は右商品を生産し販売する小売商人である。原告の本訴提起ならびに支払命令の申立のなされたときは、既に本件広告料を支払うべき昭和四四年一一月末日より同四五年一〇月末日までの一二回の分割支払期日よりそれぞれ二年を経過しているので、被告は本訴において民法第一七三条一号の時効を援用する。
四、抗弁に対する認否
1、抗弁第一の事実は、連合広告禁止の趣意及び連合広告を一切認めない約定の点を除いて認める。連合広告を禁止するの
は、転売利益を得て譲渡するのを防ぐためであり、連合広告であつても右事項に触れない場合は原告の都合により認めること
がある。従つて連合広告を掲載しないことを被告ら入札者に対し約束した事実はない。
2、抗弁第二の事実のうち、昭和四二年度版五十音別番号簿の第四表紙に「白鳳」の広告を入札によらずして掲載したことは認めるがその余は否認する。
3、抗弁第三は争う。
第三、証拠(省略)